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しばらくの時が過ぎて、辺りは夕暮れとなっていた。
ラスターとシオンは芝生に寝転んでいる。
「シオン先輩」
「……ん?」
「どうして、レイナ先輩が好きなんですか?」
「不思議な質問だな」
シオンは苦笑いを浮かべて、ラスターも「確かに」と呟く。
「ただただ好き。ってわけじゃなさそうでさ……」
「……レイナちゃんは……俺を」
「え?」
シオンの声は風によって遮られ、聞こえなかった。
「ただの一目惚れだよ」
シオンは、笑顔で言った。
しかし、それは作り笑顔だと容易にわかった。
「そっか……」
「そろそろ夜だ。宿に戻ったほうがいいぞ」
シオンの言葉にラスターは相づちを打って立ち上がると、歩き出した。
「シオン先輩。今日はありがとう」
「どういたしまして」
ラスターは軽く一礼をして、帰路を行く。
「……俺の命は、あの日に」
誰も居ない草原に響いた声は、悲しさを滲みだしていた。
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