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控え室にて、六人が椅子に腰を下ろしていた。
中でもラスターは気持ちが昂ぶり、今か今かと忙しない様子だ。
緊張に震えるリリスとはまるで対の存在である。
その二人から離れた場所。
アルスは、シオンに釘を刺していた。
「シオン、……本気で戦わないように」
「ならないならない」
笑いながら言っているが、アルスにはどうも信じられなかった。
おそらくレイナに傷一つ襲われるだけで大激怒し、本気になってしまうだろう、と。
『――選手の入場になります』
そうアナウンスが響きわたると、六人は立ち上がり、シオンを先導に控え室から会場へのドアを開けた。
そして今までとは違う、熱気と歓声が六人を包んだ。
決勝戦は観客席と会場がリンクしていて、観客席の声が届くようになっている。
「リリスさん可愛いー!」
「レイナ様こっち向いてー!」
「リディアちゃんー!」
熱気溢れる歓声の中から、聞こえた。
その言葉に、シオンとラスターの表情が歪んでいく。
「私の名前が呼ばれてます!」
リリスは嬉しそうだが、レイナは飽き飽きとした様子で軽く受け流し、リディアは観客席に手を振っている。
「……ムカッとくるな」
「ぶっ飛ばすぶっ飛ばすぶっ飛ばすぶっ飛ばすぶっ飛ばすぶっ飛ばす……」
「男の嫉妬は醜いですね」
落ち着かせるつもりはないらしく、アルスは爽やかに笑っていた。
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