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フィールドは入った瞬間から変わっていた。
今回は渓谷。
山や山脈に挟まれているが、それより標高の低い箇所が細長く溝状に伸びた地形だ。
真ん中には、石造の巨大な橋がある。
『さあ! 学園内大会決勝戦です!
準備は良いですね!』
アナウンスが響き渡ると、観客席が沸きあがった。耳が痛いほどに。
そして、冷静だったアナウンスも興奮した様子で叫んだ。
『試合――開始ッ!!』
「作戦通りいきましょう」
アルスがそう言うと、ラスターはリリスと共に前線を進んで行った。
ラスター達が行った後で、シオンは訝しげに呟いた。
「……カイン達はわざわざこちらの作戦に乗ったのか」
え? と、レイナが小首を傾げる。
そしてシオンの視線を追うと、ずっと向こうの木々の側にカインとアミティエが立っていた。
「では、お願いしますね」
「頑張ってね!」
アルスとリディアは、ラスターとリリスを追うように走り出していった。
それを確認してからか、カインとアミティエが動き出した。
でこぼこの地帯を跳び、あっという間に二人の前に――。
「シオン先輩、久しぶりですね」
「そうだな。前回は……残念ながら戦えなかったもんな」
シオンとカインは笑っていた。
まるで楽しそうに、射抜くような眼光をぶつけ合って。
「じゃあ始めましょう。お互いに楽しく」
「先輩としての意地を見せてやるよ」
数瞬の後、四人は一斉に動き出した。
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