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「寒いのは嫌いでして……コールドムース!」
アルスは詠唱もせずに、逃げながら魔法を発動させた。
凍えるような風が、猪を中心に吹き荒れる。
しかし、猪は鳴いた。
「効かねえなぁ!」
鎧という重装備の前には、打撃的な効果は期待できなかった。
しかし、まだ終わらない。
さらにリディアの詠唱が響き渡る。
「焔に抱かれて朽ち果てちゃえ!」
ハンマーを持つ男の真下に真紅の魔方陣が描かれ、赤く光輝く。
「――エクスハティオ!」
魔方陣の四隅から炎の柱が噴きあがる。
そして、それは猪を喰らうように呑み込んだ。
「効かないと言ってる!!」
それでも効かないと鳴き、猪は炎を蹴散らして、アルスへとハンマーが振り落とした。
ヒラリと、アルスは笑いながら避けた。
「さて、終わりですか」
リディアも杖を下ろし、んーっと大きく背中を伸ばしている。
なにが終わりだというのか、猪は元気一杯の様子だ。
「ふん、この程度の炎で……舐めるな!」
「それは貴方自身の話です」
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