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ぴしっ、と亀裂の走る音が聞こえた。
「なにっ!?」
猪の鎧を見ると、無数のひびが走っている。
なぜかと戸惑う猪に、アルスは肩をすくめて説明した。
「冷やした物質を、急激に熱したらどうなるか……、わかりますよね?」
パチンッ。
アルスが指を鳴らすと、呼応するように鎧が割れた。
パリンッと、ガラスのように砕け散る。
猪はそれを呆然と見ていたが、次第に口の端を歪め、哄笑した。
「ふはははは! 鎧が無くとも武器がある」
そう、相手の防具より武器を破壊するべきだった。
猪のハンマーは、アルスに向かって勢いよく振り下ろされた。
しかし、地面を粘土のように歪めてしまう一撃に、アルスは動く素振りを見せなかった。
それどころか、
「では降参してもらわねば」
その一撃を、落ちてきたボールをキャッチするように、片手で支えていた。
男の目が驚愕に見開く。
振り下ろした一撃は本気で、証拠にアルスの踏む地面がへこんでいる。
それなのに、アルス自身は微動だにしていない。
「なんだと……!」
「舐めないでください。シオンやカインを制すのに……魔法だけなわけがないでしょう?」
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