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あらゆる空気の流れを断絶する空間。
透明な壁に包まれた中の炎が、酸素をなくして、煙をあげながら消えていく。
「空気が……無くなる……」
「窒息させる気か!?」
セレナーデの言葉に、リックが叫んだ。
そして少ない空気を一気に吸い込み、リックは太刀を握り締めた。
「……ふぅー、こんなもんっ!」
「待って……!」
セレナーデはリックを止めようと叫んだが、それはリックには届かなかった。
爆ぜるように振るわれた太刀は、真空の壁をあっさりと砕いた。
しかし、真空の壁が壊れた瞬間――
「ぐあぁぁぁぁああああっ!」
耳を劈くような爆音と共に、リックの悲鳴が聞こえた。
透明な壁が壊れた瞬間に、二人の周りが爆発したのだ。
「……っぉ……なんだ……これ…」
「バックドラフトって知ってますか?」
「……?」
リリスの言葉に、リックは答えれなかった
「密閉空間では酸素に限りがありますから、火は消えますよね?」
リックは既に口を開く気力も無く、耳だけをかしていた。
「その時は火は完全に消えてないんです。でも真空空間が壊されて、一気に大量の酸素が送られると……爆発的に炎が膨れ上がるんですよ」
リリスは笑顔で言うと、リックは笑った。
「戦術……か。負けたよ」
そう言うと、リックは意識を手放して目を閉じた。
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