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「魔法か……っ!」
ぎりっと悔しそうに歯を噛み締めて、シオンは辺りを見回す。
二人の姿の代わりに、マナの集う感覚が得た。
「なっ……遠いっ!」
いつの間に移動したのだろうか。
シオンが叫んで、二人のほうを妨害しようとした。
しかし、途中の道が崩れている。
間髪いれずにレイナは詠唱を始めていた。
「――無光なる最果の境界」
「――聖なる加護よ」
やはり、アミティエのほうが詠唱は早かった。
それでも止まるわけにはいかない。
二人の詠唱は、抑揚の欠いた声で淡々と紡がれていく。
「――その狭間に彼らを導け」
「――我が意思に従い、盾となれ」
シオンとレイナの真下に、白い魔方陣が重なっていた。
白い光が輝きながら、二人を包み込んだ。
――アミティエの方が早かった。
カインはその事実に唇を歪めている。
そして詠唱が完成し、光は拡散した。
「――セティプリズム!」
「――ルミナプロテクション!」
シオンとレイナは、プリズムの上半分を切断したようなものに閉じ込められた。
そこに割り込む形で、シオンにレイナの放った光の壁が形成される。
しかし、それが間に合ったのかはわからない。
プリズムの中に光の奔流が噴きあがったのと、ほぼ同時だった。
――光の噴火が収まると、そこにはレイナが地面に倒れる姿があった。
対してシオンは無傷のようだ。
プリズムが消えた瞬間、真っ直ぐにレイナの元に駆け寄った。
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