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入学式が終わると、次の日から早速授業が始まった。
ラスターは騎士学科でリリスは魔工学科のため、クラスは離れている。
四年制の王立アカデミーには様々な年齢層がいるが、学生が大半だ。
午前中は教養を高めるために経済学や魔法学を学び、午後には実技練習が入るという固定メニューだ。
そんな淡々とした日が続き、二週間が経った。
「さて、今日は魔法についての講義だ」
教壇に立つ、筋骨隆々とした教師が言った。
その言葉に、一部の生徒がひそひそと囁きあっている。
「なんだ? ここは魔法が苦手なやつらが多いのか」
生徒たちは沈黙した。
わかりやすい肯定である。
魔工学科とは違い、騎士学科の受験科目に魔法学は無い。
魔法なんて使えない生徒もいるほどだ。
「では、見ていろ」
教師はそう言って懐から取り出した杖を構えた。
装飾のないシンプルな棒を、珍しいものを見るかのように生徒たちは注視している。
「――凍てつけ」
――詠唱。
術式を言葉に紡ぎだし、マナの操作を証明する。
教師の詠唱が始まると同時に、その下には魔方陣が輝きを放ちながら浮かび上がった。
その魔方陣が、教師を青白い光で染める。
数秒後、教師の詠唱が完成すると同時に青白い光が拡散した。
「――ジエロ」
教師の前方に、てのひら程度の大きさの氷塊が作られている。
重力によって氷が地面に叩きつけられると、ガラスのように欠片が辺りに勢いよく飛び散った。
「おぉ――!!」
それを見て一部の生徒たちは驚嘆の声を漏らすが、それ以外の生徒たちは特に反応を示さなかった。
見慣れた者もいれば、使える者もいる。
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