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「レイナちゃんっ!?レイナちゃん!」
「よかっ……た。無事なの……ね」
――許さない。
その無理矢理作ったような笑顔に、シオンは瞳孔を開き、怒りに震えていた。
涙が溢れそうになる。守れなかった自分を殴りたくなる。
――シオンは狂いそうになる自分を必死に抑えていた。
「レイナちゃん……俺のために……」
あの時間からして、自分とシオンの防護壁は作れなかった。
シオンの泣きそうな声に、レイナは苦笑いを浮かべた。
「ち、違うわよ……。シオンが……リーダーだ……から……」
そう言うと、レイナは意識を手放した。
――ああ。
シオンはレイナの体を優しく抱き上げ、後ろの方に寝かせようとした時。
そこにアルスがやってきた。
「シオン、レイナさんはお預かりします」
「頼む」
レイナをアルスに渡すと、シオンは振り返ってカイン達を睨む。
――ああ、許せないよなぁ……。
「……やれやれ、本気ですか。私達は避難しますよ」
アルスが最後に見たのは、シオンの鋭い眼光だった。
恐怖という言葉を、その目に宿らせているようだ。
震え上がりそうになる眼光は、矛先をゆっくりと変えていった。
「残りはシオン先輩だけです」
カインは大剣を構えて、歩み寄ってくるシオンに告げた。
シオンは何も言わず、ただただ、睨み続けている。
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