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光を失った虚無の瞳が、矛先を捉える。
蒼く鋭い眼光が、周囲の空気を凍らせた。
それに気づいたカインとアミティエは、ビクリと震える。
――あまりにも露骨な恐怖の具現。
「レイナちゃんを傷つけた」
低く重々しい声で、シオンは言葉を紡ぐ。
スッと掲げた右手に、周囲のマナが集っていき、光を放ち始めた。
その光が何かを形成していく。
形成されたものは――銀色に煌く槍。
「どれだけの罪かわかってるんだろうな?」
鈍く輝く槍を突きつけて、"氷の悪魔"は睨んだ。
「エンシェント・ウエポン!」
その言葉に会場がざわめき、教師陣も何かを慌てたように会話を始めた。
筋骨隆々とした一人の教師は、「あのバカ……使うなと言ったのに……」と呆れるように呟いている。
当然だ。
古代の魔法を扱える者が学生にいると誰が予測できたか。
「我がルーンの名の元に形成せよ
――thorn【氷の悪魔】」
シオンの手には、銀色に妖しく輝く槍が、はっきりとした姿を現した。
「魔槍・グングニル」
槍の名を確かめるように呟く。
その槍をしっかりと握りしめると、矛先から冷気が滲み出した。
氷のように鋭く冷たい眼光と、鈍く輝く矛先が、空間そのものを呑み込むようだ。
挿し絵:龍鬼里渡様![image=234893154.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/234893154.jpg?width=800&format=jpg)
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