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消え入るような声で呟いて、シオンは微かに憫笑を浮かべた。
カインがその笑みに目を向けた瞬間――シオンは目先まで足を踏み込んでいる。
シオンは瞬時に間合いをつめると、カインに向かって槍を突きつける。
咄嗟に反応し、カインは刀身で槍を押さえるが、
「ち……から負け、か……!」
強大な力に突き飛ばされた。
両腕で防いだのに、地に足をつけていたのに――
その時、突き出した格好で無防備になるシオンを、背後から長剣が襲い掛かる。
「ダメだ、アミティエ! 引け!」
えっ?
カインの声よりも早く、アミティエは自分が宙を舞っていることに気づいた。
振り下ろしたはずの剣は地面を転がり、睨むシオンの姿が目に映る。
シオンから氷のように冷たい目に寒気を覚えた時には、意識を失っていた。
「まずいな……」
恨めし気に呟いて、カインはふらふらと立ち上がった。
今のカインは無防備。
しかし、シオンは追い討ちをかけない。
それどころか降参と言わんばかりに槍を地面に突き刺した。
しかし、降参ではない。
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