42229人が本棚に入れています
本棚に追加
/709ページ
目を開けて入った光景に、ラスターは驚いていた。
巨大な円形の硝子の上に立っていて、その真下に観客席があって熱気と歓声に包まれていたからだ。
何処にこんなものがあるのだろうか。
真下のは映像なのだろうか、と、ラスターは興味津々な様子だった。
「Cチームの諸君。優勝おめでとう」
その時、目の前に立つ初老の男がゆったりと言った。
どうやら校長のようだが、その雰囲気は、優しそうなお爺さんといったところだ。
「ありがとうございます」
アルスの恭しい一礼につられて、ラスターも真似た。
校長は顎鬚に指を絡めながら、ほんわかと笑っている。
「なに、畏まることはないよ」
そう言われると、余計に肩肘を張ってしまうのがラスターとリリスだ。
そんな二人を、校長は優しい目で一瞥していた。
「堅苦しい話は省略させて貰うからの。まずは優勝商品である夏期休暇を利用した、王都旅行の招待券だ」
初老の男が杖を振り上げると、シオンの手元に六枚のチケットが舞った。
「そしてシオン君にアルス君」
校長は懐から、高級そうな便箋のようなものを取り出した。
そこに目を通しながら、ゆったりと言葉を紡ぐ。
「王都から、王都直属騎士団の推薦がきたよ。それも、零番隊だ。アルス君については承諾さえすれば試験も何もかもパスときた」
騒然。大騒ぎ。
真下の観客席は騒然となっていた。
当然の反応だ。
王都直属騎士団は、騎士団の中で最もレベルが高く、選ばれた者しか入れない。
肩書きだけで暮らしていけるほどだ。
一般兵を従える騎士団、騎士団を従える近衛兵、そして近衛兵を従えるのが王都直属騎士団だ。
そして零番隊と言えば、その頂点――なのにも関わらず。
「ありがとうございます。丁重にお断りしておいていただけますか?」
「同じく。零番隊は特に、ね」
まるで興味がないかのような――いや、むしろ嫌うような態度に、観客席は言葉を失っていた。
最初のコメントを投稿しよう!