■学園内大会本選

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  「はっはっは、そう言うだろうと思った。では、断っておくぞ?」 その言葉に、二人はあっさりと頷いた。 躊躇う時間なんて、一瞬もなかった。 それがありえなくて、 「どうして断っちゃうんだ!?」 ラスターは咄嗟に叫んでしまった。 驚く校長に、慌てて口を塞ぐ。 しかし、会場の人々もそう思っていたに違いなく、それを代弁したかのようだ。 その答えを、二人が返す。 「私は興味がありません。縛られては動きにくいですから」 「そうそう。それに俺はレイナちゃんに仕えたいからな」 「では、これにて終わるとするかの」 初老の男は、コホンッと咳払いをして、再び口を開く。 ラスターは未だに不満そうだった。 「これにて学園内大会を終了とする! 選手のみな、疲れた体をしっかりと癒し、また明日より勉学に励むのじゃ」 その言葉を聞いて、静まり返っていた観客席に歓声が沸きたった。 その歓声には、ため息も混じっている。 「主らも各自解散すると良い」 「よーし、祝勝会しようよ祝勝会!」 校長が言い終わるや否や、リディが元気一杯に叫んだ。 その様子を、校長も微笑ましそうに見つめている。 「そうね……、それもいいかもしれないわ」 「じゃあ街にでも行こうよ!」 リディアの言葉に否定する者はいない。 各々が歩き出した中、シオンは一人残っていた。 「どうしたのじゃ?」 「調べてほしいことがあります。あの、彼は、俺の……――」 どんどん小さくなる声は、初老の男にしか聞こえなかった。 そして一通り話し終えた後、初老の男は神妙な顔つきで頷いた。 「わかった。調べてみよう」 「ありがとうございます」 シオンは一礼して下がると、先に去った仲間達の後を追った。 校長は、シオンの走る姿を、ラスターの走る姿を一瞥して、小さく息を漏らしていた。
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