■紛れる闇

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  ――号泣。 帰り道、シオンは号泣していた。 その理由は、玉砕しただけじゃなく、カインとアミティエの悪戯のせいだ。 カインの「復讐しようか」という発言に、アミティエはあっさりと同意し、愛のパフェドリンクデラックスを頼んだのだ。 二人が食べている最中、ラスターとリリスは視線を漂わせ、お互いに目があうと顔を真っ赤にしたという、初心(うぶ)な話もある。 一方、シオンは悔しそうに睨みながら、己の惨めさに落ち込んでいた。 そして帰り道。 女性陣の要望に答えて、ショッピングに向かう途中、 「……ごめん。ちょっと先いっててもらえる?」 カインが突然立ち止まって言った。 神妙な顔つきで、一同ではなく、横の路地の方に視線を向けている。 「どうし……」 「構わないですよ」 ラスターの言葉を遮ってアルスが言うと、カインはアルスに一礼して歩き出した。 まるで急ぐように、足早に。 「どうしたんでしょうか?」 「リリスさん。カインはこれから女性達の元へ行き、……狼になるんです」 アルスの言葉に、ラスターは噴き出し、リディアは顔を真っ赤にさせていた。 シオンは笑いを堪え、レイナとアミティエは知らない素振りを振る舞っている。 「凄いですね! 狼だなんて……、かっこいいです」 リリスだけは、鵜呑みにして目を輝かせていた。 それを訂正しようとしたラスターも、結局うまく伝えられず、自分が恥をかくだけだった。
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