■紛れる闇

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  「さて……。何のようだ」 人気がなく薄暗い横道の中、カインの呟きは虚空へと吸い込まれていった。 しかし、そこにエコーのかかった声が響き渡る。 「ふふふ。久しぶりだね……カイン。ほんとうに久しぶりだぁ!」 建物の隙間の影から、燃えるような赤い髪の男が音もなく現れた。 その男は、中性的な顔立ち、いや、女顔にも見える。 「久しぶりだな。ルイネ……いや、今はデストロイ帝国四聖のルイだったかな」 「そんな警戒しないでよ。親友にそんな態度なんか酷いじゃないか」 親友、ね。 呆れたように呟くカインに、ルイは柔らかく微笑んだ。 「敵国の兵士が何のようだ?」 「連れないなぁ。唯一無二の親友へ情報をあげようと思ってね♪」 ルイは、カインの双肩に手を置き、目線を合わせて言った。 カインは鬱陶しげにしているが、ルイネの言葉に目を見開いた。 「近々、デストロイ帝国がこの国セレスティアに宣戦布告。目的は“古の鍵”と“神の器”」 「鍵と器……? まさか古代兵器を使う気かっ! ……それに」 「今のセレスティアでは、デストロイ帝国の軍事力には対抗できない。よね♪」 「……」 「あはっ♪ 君のことなら全てわかるよ。  “親友”だもん♪」 親友。 彼が言うほど不気味な言葉はあるだろうか。 恨めし気に歯を噛み締めながらも、カインは笑っていた。 「多分、宣戦布告は2ヶ月くらい後じゃないかな? 正確にはわからない。……捨て駒だろうけど。――じゃあカイン。頑張ってね」 わざとらしく恭しい一礼を残して、ルイは影の中へと溶けるように姿を消した。
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