■紛れる闇

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  「あれ? カイン、早かったな」 人ごみから流されるように戻ってきたカインに、ラスターは声をかけた。 いつも通りの笑みを浮かべたまま、カインは頷いた。 「うん。ちょっとしたことだった」 ――そう、ちょっとしたことだ。 繰り返すように、確かめるように呟いて、カインは輪の中に戻っていった――。 黄昏の色彩を、墨汁が黒く染めていく。 沈みかけている太陽を背に、ルイは指揮者のように手を動かしていた。 「気に入らないなぁ。気に入らないなぁ。カインは、カインは僕のものなのになぁ」 刺し殺すように鋭い視線が、遥か下のショッピングを楽しむ八人に向けられていた。 刃物の切れ込みを思わせる笑みを浮かべた口元からは、物騒な言葉が飛び交っている。 「許せないよねぇ。絶対に許せないよねぇ。いたぶるべきだよね、失うべきだよね……。カインだって、性懲りもなく……まぁ」 ニタァ、と気味の悪い笑みを浮かべる。 「友達は夏期休暇に王都旅行だもんね。ちょうどいいやぁ♪ その日に戦争、そして僕は親友に」     影が落ちた瞳に、狂気が孕んでいた。 鼻歌混じりに呟きながら、"それ"を思い浮かべて、楽しそうにしている。     「くくく、あはは! 楽しみだなぁ……。ふふ、おかえり」 沈む夕日を背に、ルイは八人を見下してせせら笑っていた。  ――運命は廻り始めた。  ――老朽化した歯車がキリキリと……。  第一章 ―運命、出会いと共に―               《完》
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