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二人の前に立ったリリスは、祈るように胸の前で手を合わせた。
「大切な人のためにも生き延びてくださいね? 石にもひれ伏す思いで!」
「ひれ伏すのか!? は、這いつくばって、だな」
「帰ってきたら諺の辞書でも貸しますよ?」
二人の笑い声に、リリスは顔を真っ赤にして逃げた。
その横から、ラスターが入れ替わり、軽く二人の腹を拳で打った。
「シオン先輩、帰ってくるまでに……俺は貴方を超えて見せます。だから、帰ってきてください」
「それは楽しみだ。必ず帰ってくる」
「アルス先輩、帰ってきたら魔法のコツを教えてください。だから……」
「わかりました。必ず帰りましょう。ですが、私は厳しいですよ?」
ラスターは満足そうに微笑み、二人から離れた。
そして道を開けるように、カインやリリスを押しながら横に進んでいく。
ひとり、レイナはその場に立ったまま二人を見ていた。
「アルス先輩。貴方は数少ない本音を話せる人物です。また、色々と相談に乗ってくれないと困ります」
「ええ、私でよければ、いつでも」
シオンが嫉妬しそうな話だ。
実際にむくれているシオンに、レイナは向き直った。
「指輪の誓い、覚えてますよね?」
「……あ、ああ。それが俺の忠義でもあり、愛だから。そうだろ?」
その言葉に、レイナは満面の笑みで応えた。
愛は違うけどね、と追記して。
「今日は解散しようか。それぞれ思いもあるだろうしね」
珍しくカインが仕切っていた。
それぞれが移動する中、学園大会のように、ラスターはシオンを引き止めた。
「シオン先輩。お願いがあるんだ」
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