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中庭のコンクリートで固められた床の上、二人はいた。
「さっき話した通り」
ラスターは双剣の柄に手をかけ、抜いた。
「行く前に、俺の実力を実感したかったんだってな」
シオンは手甲を掲げ、ニヤリと笑う。
どこか楽しそうだ。
「負けない! 俺は……追い付くんだ!」
双剣を手に、ラスターは駆け出した。
金属音が響き渡る。
一合、二合、三合、四合――
そこには激しい攻防が繰り広げられていた。
シオンの流れるような打撃は、ラスターを襲う。
それでもラスターは倒れず、間合いの取り方を考えることで、徐々に反応できるようになっていた。
(ああ、――楽しい)
なによりも、その戦いにラスターの心は奮えていた。
筋肉が悲鳴をあげ、苦痛に顔が歪み、精神的に疲労していく。
それでも楽しかった。どうしてか楽しかった。
負けそうで、悔しいはずなのに。
――それでも、楽しかった。
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