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勝敗は決した。
シオンの打撃は捌けるようになった。
氷の魔法はフランヴェルジュで跡形もなく溶かした。
でも――
「負け……たのか」
完全な敗北だ。
悔しそうに呟いたけれど、ラスターは清清しい気分だった。
「いけると思ったのになぁ……」
「いや、ビックリだった。……短期間で、ここまで強くなってるなんてな」
手甲を放り投げながら、シオンは嬉しそうに微笑んだ。
なぜ嬉しそうなのかは、ラスターにはわからなかった。
「絶対に死ぬなよ。次は勝つんだからな?」
「ああ、帰ってくる。レイナちゃんとの誓いもあるしな」
シオンの左手の人差し指には指輪がある。
赤い宝石ガーネットの高級そうな指輪だ。
それを見つめながら、ラスターはさっきの会話を思い出した。
「指輪の誓いって……? ちょっと興味あるな」
「ははっ……ああ、いいぜ。仕方ないから、みんなに俺とレイナちゃんの……愛の記録を教えてやろうか」
冗談のように言ったはずなのに、シオンの声はどこか陰りがあった。
しかし、数瞬の後、シオンはその声がなかったかのように明るい声で叫んだ。
「よし! 今からみんなを集めるか!」
「え、今から?」
「ああ、話したくてうずうずしているんだよ」
「ははっ……」
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