■明かされる真実、指輪の誓い

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         ――ж―― 今でも、全てを鮮明に覚えている。 本名はシオン・セルティア。 元々はセレスティア国の中級貴族のひとつ、セルティア家の長男だった。 家庭は両親に弟。 他にも、家族の様に接してくれた家臣や侍女がいた。 何不自由なく、幸せな毎日を送っていた普通の少年だ。 しかし、九歳の時に終わった。 そんな幸せが、突如崩れだしたんだ。 ある男が屋敷に乗り込み、両親を、弟を、家臣を切り刻んでいった。 父上は凄腕の剣士でもあったが、男に致命傷を負わせた末に息絶えた。 俺はたまたま庭に出ていて助かったが、部屋に戻る頃には――誰も居なかった。 初めて血に酔った。ひどく咳き込み、嘔吐を抑えられなかった。 血の絨毯に眠る両親、屍山血河に横たわる弟。 絶望――そして怒り。 火種がくすぶり、燃えるのではなく爆発した。 「お前が……! ――お前がッ!!」 足元に横たわっている護衛の剣で、瀕死の襲撃者に止めをさした。 「返せ!返せぇぇぇぇぇぇええッ!!」 絶叫しながら、そのまま突き刺した。 噴き出す返り血を浴びながら、泣きながら、人を殺した。 殺した感想は――呆気ない。 こんな男が皆を殺したというのか? ああ、俺は夢を見ているんだ。 ――胡蝶の夢。 俺は血になり、血の夢を見ている。 そうだ、試しに自分の腕を切ってみよう。 皮膚に食い込ませた刃は、ぷしゅっと、血を飛ばした。        …………イタイ? 全身から冷たい汗が噴き出す。 倒れそうになるくらいの目眩がした。 ありえないありえないありえなありえないありえないありえない ――今、目に写る光景は現実? 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」
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