■明かされる真実、指輪の誓い

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    俺の人生の転機は、唐突だった。 「おい、ガキ。お前没落貴族なんだってな」 体格の良い男が二人、怒ったような顔で迫ってくる。 乞食にしか見えない俺を、没落貴族と呼ぶ男は、昔から俺を知っていたのだろう。 その瞬間、唐突に、腹を圧迫された。 蹴り飛ばされたと認識した時には、何もない胃から、何かが飛び出そうだった。 「お前ら貴族だけ良い思いしやがってよ! 俺ら平民は毎日毎日――」 ああ、憂さ晴らしか。 容赦なく殴られ、蹴られ、際それが繰り返される。 今でこそ冷静に言えるが、当時はトラウマになる出来事だった。 そして痛みで意識が飛びそうになった時、左手の鈍い音が ――俺の運命を変えたのかもしれない。 殴られてふさがった目のせいで全く見えなかった。 「あー。こりゃ折れちまったな」 しかし、男の笑い声に気づいた。 左手が全く動かないことに。 動かそうと力を込めた瞬間。 「――ッ!」 声にならない叫び声が漏れた。 本当に声にならなくて、激痛が俺の中で警鐘を鳴らしていた。 ただ謝れと、謝って見逃してもらえと。 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い ごめんなさいごめんなさいごめんなさい 「なっ、なにしてるんですか!?」 しかし、薄れゆく意識の向こうで、男ではなく女の声が聞こえた。 「ねえ! 君……しっかり! しっかりしなよ!」 少女だろうか、若い女性の声が聞こえた。 瞼が開かない。 それよりも、強烈な痛みに意識を保つことすら限界だった――
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