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護衛として、俺はアルソート家に仕えることになった。
前から聞いてはいたが、やはりアルソート家は五大貴族の長の役割を務めていた。
自分の家より広く、優雅な生活に一時期は酔いそうにもなったほどだ。
レイナは剣術、魔法共に年相応の実力というのを遥かに凌駕していた。
その護衛は、たかが嗜んだ程度。
その日から、俺はひたすら努力をした。
朝は稽古に励み、昼は空き時間を縫ってレイナと仲を深め、夜は基本からの勉学を。
稽古のせいで、年不相応の筋肉と体格になった時期もあった。
貧血を起こしたり、腱鞘炎になったり、血反吐を吐きそうになったりもあった。
けれど、全ては彼女のために――
そうした努力が報われて、魔法はレイナに勝てなくとも、槍術を含めた接近戦においてはアルソート家1となった。
加えてルーン文字の解読。
若干15歳にしてルーン文字を解読し、使いこなせるようになったことは、王都を含めて大騒ぎになったほどだ。
これにはアルソート家も大騒ぎとなり、彼女――レイナの笑顔を見る回数も増えた。
そして、16歳の春。
アウル家の養子として、俺は送られることになった。
厄介払いでもなんでもない、ただ養子として送られるだけ。
このまま使用人を続ければ、才能がありながら様々な道を閉ざされることになる。
そういったアルソート家の気遣いだった。
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