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「だから、あの日、大切なものを俺にくれたレイナちゃんには……、ってうぉ!? な、なに泣いてんだ?」
リリスは顔を手で隠しているのに、その隙間を通って涙が零れ落ちている。
リディアに至っては、嗚咽を止めることができずに、ぽろぽろと大粒の涙を流し続けている。
ラスターは机に突っ伏していた。時々、肩がしゃくりをあげている。
「だって゛……悲しいじゃん……。でゆーか、どうして゛二人は泣かないんだ……」
「鼻水をふけ。鼻水を」
バッと顔をあげたラスターに、シオンが嫌そうな表情を見せる。
ラスターの言う二人とは、アミティエとカインのことだ。
「私とカインは知ってたからね」
「私は知ってたけど……また涙がでちゃったよ……。はぅぅ……」
まさにダム決壊。
リリスは一言も喋らない。
そんな、しんみりとした雰囲気を変えるべく、カインが質問をした。
「ところで、何でシオン先輩の髪型と瞳の色は、レイナ先輩と一緒なんですか?」
「染めたんだ。レイナちゃんとペアにしようと思ってな」
満足そうに誇っているけれど、すこし気持ち悪い。
ラスターも続けた。
「そいや、なんで“ちゃん”付けに変わったんだ?」
「だって、あの後『付き合ってくれるわね』って言われたんだぜ! やっぱ二人だけの呼び名が欲しくてさ……」
その言葉に、リリスを除く四人が固まった。
四人は円陣を組むようにして集まり、小さい声で話している。
(シオン先輩、付き合うの意味を間違えてるよな)
(はぅ。確かに)
(でも幸せそうだよね。んー、青春だよ!)
(まぁ言わぬが花ってね)
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