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「と、話を戻す。だからお前らは……」
「そんな理由で、私を出し抜こうとしたのね」
がちゃりとドアノブの音が聞こえて、ドアが開いた。
そのドアは――アミティエの部屋。
開いたドアの前には、レイナと、申し訳なさそうにしているアルスが立っていた。
「すいません。酔った勢いで話してしまいました。シオンがレイナさんを遠ざけるようにいったことと、今回の件」
そう言って、おどけてみせたアルスの顔はうっすらと紅潮している。
少し怒っているように見えるレイナは、シオンの前で仁王立ちしていた。
「シオン。私は貴方も心配なの。だからついてくわ」
有無をいわさぬ表情。
その目には、決して引かないという意思が宿っているようだ。
「……今回は、命の保証がない。だから連れていけないよ」
「なら、貴方が私を守ってくれればいいのよ」
強気な態度で淡々と告げる。
端から見ていたカインは「あれは駄目かな」と呟いていた。
「……じゃあ命令よ。私を連れていきなさい」
挙句、そう強く言い放った。
うぐっと引き下がったシオンは、数瞬の間を置いて、肩を落とした。わかった、と。
「シオン先輩って、レイナ先輩のお願いだけは聞くもんね」
「はう。しかも命令だもん。連れていかない訳にはいかないよね」
後ろからの増援に、シオンは一人うな垂れている。
いや、リリスは泣き続けてうな垂れているが。
「わかった。でも……無茶はしないで欲しい」
「ええ、わかったわ」
シオンは断れるはずもなく、弱々しい声で言った。
それを聞いて、レイナも満足そうだ。
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