■魔法の惚れ薬

2/14
前へ
/709ページ
次へ
  学園の三年生及び四年生の男子が、徴兵として王都に行ってから一週間が経った。 一方、他の生徒たちは。 戦争でも、勉学を怠ることは許さない――という校長の言葉により、今まで通りの日常を送っている。 いや、変わった事と言えば、一つあった。 それは―― 「リリスさん、付き合ってください!」 リリスに言い寄る男が、異常に増えてきた。 元々リリスは、ラスターが気づかないだけで、ドキッとするような容姿を持っている。 それに加えて学園内大会で話題になったため、必然的に増えていったのだ。 「あの、その……、ごめんなさい……」 リリスは申し訳なさそうな表情になり、頭を下げて謝った。 それに対し、悲しむ男は「気にしないでください」と言ってそのまま走り出す。 二人のいた場所から、死角に位置する木陰に座っていたラスターは立ち上がり、リリスに向かって微笑んだ。 「これで20は超えたな」 「あはは……、罪悪感も溜まってくね」 ――ああ、20は越えたな。 ラスターはニッコリと笑ってはいるが、血管が浮き上がるほど激昂している。 確かに男が言い寄る理由もわからなくはないが、ラスターはそれを見るたびにイライラしていた。 「まだ朝だ。昼休みと放課後には誰が来るかな?」 「そう考えると、ちょっと困っちゃうね。それより授業に行こうよ」 彼女としてではなく、兄として―― そう自分に言い聞かせながら、ラスターは目つきを鋭くしながら歩いていた。 学園大会優勝チームの名を使った睨みは、他の生徒からすれば恐ろしいのだ。
/709ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42229人が本棚に入れています
本棚に追加