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学園の三年生及び四年生の男子が、徴兵として王都に行ってから一週間が経った。
一方、他の生徒たちは。
戦争でも、勉学を怠ることは許さない――という校長の言葉により、今まで通りの日常を送っている。
いや、変わった事と言えば、一つあった。
それは――
「リリスさん、付き合ってください!」
リリスに言い寄る男が、異常に増えてきた。
元々リリスは、ラスターが気づかないだけで、ドキッとするような容姿を持っている。
それに加えて学園内大会で話題になったため、必然的に増えていったのだ。
「あの、その……、ごめんなさい……」
リリスは申し訳なさそうな表情になり、頭を下げて謝った。
それに対し、悲しむ男は「気にしないでください」と言ってそのまま走り出す。
二人のいた場所から、死角に位置する木陰に座っていたラスターは立ち上がり、リリスに向かって微笑んだ。
「これで20は超えたな」
「あはは……、罪悪感も溜まってくね」
――ああ、20は越えたな。
ラスターはニッコリと笑ってはいるが、血管が浮き上がるほど激昂している。
確かに男が言い寄る理由もわからなくはないが、ラスターはそれを見るたびにイライラしていた。
「まだ朝だ。昼休みと放課後には誰が来るかな?」
「そう考えると、ちょっと困っちゃうね。それより授業に行こうよ」
彼女としてではなく、兄として――
そう自分に言い聞かせながら、ラスターは目つきを鋭くしながら歩いていた。
学園大会優勝チームの名を使った睨みは、他の生徒からすれば恐ろしいのだ。
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