■魔法の惚れ薬

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  王立アカデミーの教室は、授業を行う教師が一番下の段に位置し、階段のように席が並んでいる。 教壇には、筋骨隆々とした体躯を特徴とする教師(デューク・アルベルト)が居座っていた。 ラスターは近くにいって気づいたのだが、彼は2メートルを超すと思われる。 「では、授業を始めるぞ。今日は初級魔法を完璧に使いこなしてもらう」 一部の生徒は口々に文句を漏らした。 しかしデュークが重々しく咳をすると、生徒は一瞬にして沈黙した。 彼の巨大な体躯から放たれるオーラに、勝てるはずが無いのだから。 「なんせ、長期休暇明けのテストにもでるからな」 その言葉を聞いた瞬間、ラスターは驚愕した。 そう、ラスターは完全に忘れていたのだ。 (やばっ……!) ラスターはその場で頭を抱えた。 彼は、学園大会の成績から見れば相当優秀な生徒である。 恐らく上級生は、彼を、頭もいいし強い万能な後輩と思っているだろう。 しかし、 「さて、学園内大会にて優秀な成績を納めたラスターなら……簡単だな?」 その言葉に、教室中が笑いに包まれた。 ラスターは魔法の授業で当てられても、幾度となく「わかりません」を繰り返す生徒なのは、皆も承知だ。 「が、頑張らせていただきます……」 窓からさしこむ、ぽかぽかとした陽気に当てられているのに、ラスターは冷や汗をかいていた。
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