■魔法の惚れ薬

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  昼休みになって、リリスと昼食を取るべく中庭の待ち合わせ場所へ向かった。 その途中。 「よおっ! 元気にしてたか?」 中庭までの道を歩いていると、背中をバンと叩かれた。 ――い、痛っ。 意外に重たい一撃で、ラスターは眉根を寄せた。 振り返ると、そこには金色の髪と額に巻かれた帯を風に揺らす青年――リック・マグニスが立っていた。 彼とは学園内大会決勝戦で当たって以来、わりと仲良く接していた。 「ああ、元気にしてたぜ。ってリック、お前は俺の後ろだろ……」 「はっ、気にすんなよ。……そういや嬢ちゃんもさっき居たんだが、何やら男に呼ばれてたな」 リックの言う“嬢ちゃん”はリリスを指している。 また呼び出されたのか、と呆れた反面、もどかしい気持ちが押し寄せてくる。 その不愉快な気持ちを消し去るように、髪をぐしゃぐしゃと掻き乱していた。 そんなラスターの姿を見ていたリックは、ニヤリと笑う。 誰もが答えるだろう。 あの笑みは、何かを企んでいると。 リックは、ふざけ半分でラスターの背中に抱きついた。 「ラ・ス・ター……。ほら、これやるよ」 リックは胸元のポケットから、桃色の液体が入ったビンを取り出し、ラスターの目の前に持ってきた。 「使ってみな」 受け取ったビンからは、甘い香りが漂っている。 ――香水じゃない……な。なんだ、これ。 気になったラスターは、小瓶を揺らして見せた。 「これ……なに?」      「調味料さ。リリスの弁当に混ぜてみな? 最高に上手くなるんだぜ」 そう言ったリックは、ニカッと笑った。 確かに甘い香りが、鼻腔を通って、脳まで伝わっていくような感じがする。 ――それなら問題はないよな! 断言する。ラスターは馬鹿だ。 「ありがとな。早速使ってみる」 そう言ってラスターは急いで中庭への道を駆け出した。 後ろ姿を見つめながら、リックは哄笑していた。 「あーっはっは! くくくっ……あー、やっぱいいな、あいつ。……御幸せに」 <挿し絵:某Z様>image=244107565.jpg
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