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「あ、リリス。もう居たのか」
中庭へ行くと、既にリリスはベンチに座っていた。
色鮮やかな花々が植えられる花壇を見ていたらしい。
こちらに気づくと、柔らかく微笑んだ。
「うん。今きたんだけどね」
胸の前で手を合わせてリリスは、喜んでいるようにも見えた。
そんなリリスとは裏腹に、ラスターは煮えきらない思いが胸を締め付けていた。
先ほどはどんな男に告白されたのだろうか、また、返答はどうしたのか。
「ラスター? 大丈夫?」
その声に、ラスターはハッとする。
と同時に、リリスの顔が目の前にあったことに慌ててしまった。
どうやら意識しているらしい。
話をはぐらかすようにラスターは先ほどのビンを見せた。
「そうだ。これ使ってみないか?」
名目上、調味料。
桃色の液体は太陽に照らされて、色素が鮮明に映し出されている。
「綺麗だね。これなに?」
「調味料だってさ。リックがくれたんだ」
リリスは「へぇー」と言って、弁当箱を開いた。
そしてラスターから調味料を受け取ると、卵焼きに五滴ほど足らしてみる。
――いきなり五滴はどうなんだ?
「じゃあ、ちょっと食べてみるね」
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