■魔法の惚れ薬

5/14
前へ
/709ページ
次へ
  「あ、リリス。もう居たのか」 中庭へ行くと、既にリリスはベンチに座っていた。 色鮮やかな花々が植えられる花壇を見ていたらしい。 こちらに気づくと、柔らかく微笑んだ。 「うん。今きたんだけどね」 胸の前で手を合わせてリリスは、喜んでいるようにも見えた。 そんなリリスとは裏腹に、ラスターは煮えきらない思いが胸を締め付けていた。 先ほどはどんな男に告白されたのだろうか、また、返答はどうしたのか。 「ラスター? 大丈夫?」 その声に、ラスターはハッとする。 と同時に、リリスの顔が目の前にあったことに慌ててしまった。 どうやら意識しているらしい。 話をはぐらかすようにラスターは先ほどのビンを見せた。 「そうだ。これ使ってみないか?」 名目上、調味料。 桃色の液体は太陽に照らされて、色素が鮮明に映し出されている。 「綺麗だね。これなに?」 「調味料だってさ。リックがくれたんだ」 リリスは「へぇー」と言って、弁当箱を開いた。 そしてラスターから調味料を受け取ると、卵焼きに五滴ほど足らしてみる。 ――いきなり五滴はどうなんだ? 「じゃあ、ちょっと食べてみるね」
/709ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42229人が本棚に入れています
本棚に追加