■魔法の惚れ薬

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  桃色の液体は、卵焼きにスッと染み込んだ。 驚くほどあっさりと染み込んだが、匂いや見た目は特に変わっていない。 「足りないかな? ……いただきます」 一礼してから、リリスは卵焼きを口の中に運んだ。 そして味わうために咀嚼するのだが、 「うまい……?」 「特にかわらないと思うな……」 どうやら変わらないらしい。 その答えに、ラスターもガッカリだったが、そんなものだと割りきることにした。 そして試しに自分もかけようとした時―― 「……えっ?!」 リリスが声をあげた。 何かとラスターが振り返ると、リリスの体から桃色の光が淡く輝いている。 「な、なんだこれ!?」 ただの調味料ではなかった。当然だが。 しかし驚くラスターを傍目に、その光はすぐに治まってしまった。 「今のはなんだったんだ?」 訝しげにリリスに問うが、返事がない。 何か異常が起こったのかと、ラスターはリリスの肩を掴んで揺らした。 「ちょっ、リリス! 大丈夫か?!」 「あはっ……」 答えるかわりに、リリスはゆっくりと手を動かし、ラスターの手首をガッチリと掴んだ。 ――え? あ、あれ? 手首を掴まれて、ラスターは目を丸くした。 目の前には、艶かしい吐息を漏らすリリスがいて―― 「ラスター、一緒に死のう?」
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