42229人が本棚に入れています
本棚に追加
ラスターは目を見開いて、ガチッと固まった。
今の言葉を、頭の中で繰り返す。
――死のう。
そんな放心状態のラスターの目先に、いつのまにか短剣が突きつけられていた。
いや、鈍く光る刀身が押し付けられている。
「あの……リリスさん……刃が食い込んで、ちょ……」
リリスはニッコリと笑った。――口だけ。
まるで鷹のような鋭い目に、切り込みの入った口元。
その様子に恐怖して、ラスターは飛びのいた。
「あはっ。ラスターは知ってる? 実はね、ラスターってね、魔工学科ではね、憧れの存在になってるのー」
そう言ったリリスはまた、ニッコリと微笑んだ。
――怖い怖い怖い、怖いッ!
ラスターは逃げ出そうとしたが、目の前の人物がリリスだという事実に、逃げることができなかった。
「弟にしたいとか、私を守ってほしいとか、いっぱい……いっぱいいっぱいいっぱい……女の子が言ってるんだよー?」
――どうしてどうしてどうして、どうしてっ!
元に戻ってくれと哀願するラスターに、無情にも突きつけられたのは短剣だった。
「だからね? ラスターを私だけの者にするの!」
「り……理由になってねぇぇぇぇぇ! なんでそこでリリスのものになるん……うぉあっ!?」
躊躇なき一閃。
尻餅をついて避けれたものの、ネクタイに切れ目が入っていた。
「ねえラスター? どうして逃げるの?」
「に、逃げるに決まってるだろ!! どうしちゃったんだよ! リリ……」
ふと漂わせた視線の先に、リックが顔の前で手を合わせて、ぺこぺこと謝っている姿があった。
――リック……お前が原因か!
反動をつけて立ち上がった瞬間、今までラスターがいた場所に短剣が突き刺さった。
――あれ、ここって……石だよな?
「逃げないでよぉ」
最初のコメントを投稿しよう!