■魔法の惚れ薬

8/14
前へ
/709ページ
次へ
  「ごめん!」 リリスを両手で突き飛ばし、脱兎の如く駆け出した。 目的はリック。だが、リックも逃走を始める。 一方、リリスは両手を地面について、そこを支点に体を跳ね起こした。 「あはははははは! 逃げちゃ嫌だよ!」 「そうだ! 逃げるなリックゥ!!」 リリスは走り出したが、距離が縮まることはなかった。 さすがに、ラスターが速さで負けるはずはない。 そして、とうとうリックにも追いついた。 「よお」 陽気に微笑む友人を、ラスターは殴りたい気分だった。 しかし失速はできない。 「どうなってんだ、あれ! 調味料じゃないのかよ!」 「悪い。実はな、あれ魔法の惚れ薬なんだわ」 二人は道を曲がると、高い塀を飛び越えた。 さすがにリリスの身体能力では上がって来れないだろう。 足止めできたと安堵して、ラスターは呆れ半分で問い詰めた。 「……魔法の惚れ薬?」 「ああ、一滴足らせばイチコロ……なはずなんだけどなぁ」 さすがに、あれはおかしい。 そう呟いて、リックは考え込んだ。故意ではないらしい。 しかし、ラスターの発言に―― 「……五滴足らしてたぞ?」 「……」 リックの顔は真っ青になった。 そしてキラッと舌を出して笑いながら、右に曲がった。 「3滴以上は病み病みな程、愛されます☆ ハードプレイを御所望の方はぜひ☆  ……じゃあな!」 「えっ……お、おい! 逃げるのかよ!」 ――絶対に逃がさないからな! そう意気込んで、追いかけようとした。 しかし、右に曲がろうとしたラスターの眼前に何かが通った。 ……頬から顎に伝って、一滴の血が流れていく。 後ろからの発砲音、そしてリリスが銃を構えていた。
/709ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42229人が本棚に入れています
本棚に追加