■魔法の惚れ薬

9/14
前へ
/709ページ
次へ
  「待ってよ、ラスター。私が嫌いなの? 置いてくの?」 「リリス、話を聞いてくれ。お前は……」 鷹の目が、ラスターを睨む。 獰猛な動物が牙をちらつかせているように、リリスも銃の引き金に指をかけていた。 ――え、殺されるのか? スーッと全身が急速に冷めていく。 逃げようと後ろへ一歩下がるが、そこには壁があった。 「大丈夫……大丈夫……」 その瞬間、リリスは引き金を引いた。 ――まじかよ! しかし、転びそうになったラスターを襲ったのは閃光だった。 それも眩しいとかいうレベルじゃなく、目が痛くなる光だ。 ラスターは反射的に目を瞑って、手で影を作った。 「あはっ。ちょっとの間だけ視界が見えなくなるんだよ?」 「なっ……み、見えない……!」 コツ、コツと足音が響く。 一歩、また一歩と音が大きくなる。 その律動的な足音が、まるでカウントダウンのように聞こえて、身震いが止まらなかった。 ――段々と戻ってくる視力。 微かに見える目に頼って――後悔した。 そこには、リリスは鼻先がかすめるくらいに詰め寄っていた。 鷹の目と、三日月の笑みが、視界一杯に広がる。 そして艶かしく、ゆっくりと、うっとりしながらリリスは呟いた。 「ラスター、ずっと一緒だよ? ずっと……ずーっと、ずっと!」 優しい微笑みとは裏腹に、銀色の鋭い刃が、太陽の光に当たって輝いていた。
/709ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42229人が本棚に入れています
本棚に追加