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「………………ごめん、カイン。何か言った?」
「え? キスだよ。キス」
真剣な表情はどこへいったのか、開き直ったらしい。
満面の笑みを、呆然とするラスターに向けていた。
「は、……はぁっ!? キッ、キスって……!」
止まっていたラスターの思考が、噴火の如く爆発した。
まるで頭の中が全て吹っ飛んだように。
カインはニコニコと笑いながら、平気で嘘を並べていく。
「そうだ。なぜキスかと言えば、惚れ薬は口の中の酵素に反応して解毒されるわけだ。まさに王子様のキスによって目覚めるお姫様、いやぁ幻想的かつロマン溢れる――」
嘘、嘘、全て嘘。
それでも根拠があるように聞こえて、ラスターは真剣に悩んでいた。
けれど、苦虫を噛み潰したような表情で否定した。
「そんな事できるわけ無いだろ!」
「あーそっかぁ。じゃあ俺がやろうか」
――は?
開いた口が塞がらないラスターを尻目に、カインは寝ているリリスの顔を優しく持ち上げた。
――え、ほんとうにするのか? 冗談だよな?
そして、そのまま吸い込まれるように――
「待てぇぇぇぇええっ!!」
「ごぼっ……ちょっ! 待った! らすっ……ぎぶ……」
かえるのように飛び出して、ラスターはカインの首を締め上げた。
まさかの攻撃にカインも痛い目を見ている。
ラスターの両手をポンポンと二回叩いたが、一向に手を弱めてくれなかった。
しかし、我に返ったラスターは慌てて手を離した。
あやうく失神からのイビキという最悪のパターンを辿るところだった。
「あ、ごめん……」
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