■魔法の惚れ薬

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  「………………ごめん、カイン。何か言った?」 「え? キスだよ。キス」 真剣な表情はどこへいったのか、開き直ったらしい。 満面の笑みを、呆然とするラスターに向けていた。 「は、……はぁっ!? キッ、キスって……!」 止まっていたラスターの思考が、噴火の如く爆発した。 まるで頭の中が全て吹っ飛んだように。 カインはニコニコと笑いながら、平気で嘘を並べていく。 「そうだ。なぜキスかと言えば、惚れ薬は口の中の酵素に反応して解毒されるわけだ。まさに王子様のキスによって目覚めるお姫様、いやぁ幻想的かつロマン溢れる――」 嘘、嘘、全て嘘。 それでも根拠があるように聞こえて、ラスターは真剣に悩んでいた。 けれど、苦虫を噛み潰したような表情で否定した。 「そんな事できるわけ無いだろ!」 「あーそっかぁ。じゃあ俺がやろうか」 ――は? 開いた口が塞がらないラスターを尻目に、カインは寝ているリリスの顔を優しく持ち上げた。 ――え、ほんとうにするのか? 冗談だよな? そして、そのまま吸い込まれるように―― 「待てぇぇぇぇええっ!!」 「ごぼっ……ちょっ! 待った! らすっ……ぎぶ……」 かえるのように飛び出して、ラスターはカインの首を締め上げた。 まさかの攻撃にカインも痛い目を見ている。 ラスターの両手をポンポンと二回叩いたが、一向に手を弱めてくれなかった。 しかし、我に返ったラスターは慌てて手を離した。 あやうく失神からのイビキという最悪のパターンを辿るところだった。 「あ、ごめん……」
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