■魔法の惚れ薬

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  「は?」 「え」 ――間違いなく、二人の唇が重なった。 ぎこちないけれど優しく、淡くて、儚いキスのはずが―― その瞬間、ボンッという音と共にリリスが倒れた。 放心しているラスターも顔から水蒸気を暴発させた。 林檎なんてものじゃない。 それほど二人は顔を真っ赤にいしている。 「アミティエ、いたんだね」 「うん。最初っからね。見てるとまどろっこしくて、つい」 「いやいや、ぐっじょぶ」 そんな二人を気にすることなく、二人は手を叩いた。 アミティエは、ラスターとリリスの顔を掴むと、無理矢理引き合わせたのだ。 強引でデリカシーのないやり方である。 そして、ようやく目覚めたラスターは、顎が外れそうになるほどの大口で叫んだ。 「あ……、カイン、どどどどどういうことだよ!! アミティエ先輩も!」 「何が?」 「どうしたの?」 「普通にリリスは戻ってるじゃないか?! それにアミティエ先輩は何してるんですか!」 カインとアミティエは互いに顔を合わせて、きょとんとしている。 カインは顎に手をおいて、アミティエも真似るように顎に手をおいた。 「だから、このままだと戻っちゃうって言ったじゃないか?」 「なっ……戻るって意味だったのか!?」 「私は見ててイライラしちゃった」 「……」 ああ、ろくでもない先輩方だ。 そのうえ、カインとアミティエは「もう一回。もう一回」と連呼している。 「――火の精よ、我が手に宿れ!」 その瞬間、ラスターの真下に魔方陣が現れた。 魔法を使えないはずなのに、その真下には真紅の魔方陣が浮かび上がっている。 「焼き尽くせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」 間違いなく火の初級魔法だ。 炎の球が五つ、まるで砲弾のように二人へと発射された。 しかし、二人は難なく避ける。 「おー、初級魔法使えるようになったね」 「おめでとー」 「うるさぁぁぁぁぁぁい!」 脱兎の如く走り出した二人を、ラスターは鬼の形相で追撃する。 魔法を使えた喜びよりも、怒りが勝っていた。 ――結局、最後には二人を捕まえれず、謝るべくリリスを起こした。 しかし、リリスは衝撃的な出来事にキスの部分の記憶を失っていた。 安堵するラスターは嬉しいような悲しいような、複雑な気分で終わりを告げるのだった――。
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