■戦いの幕開けと暗幕

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  「あの、一つ質問なんですけど」 街中にある商店街を巡り、随分と堪能してホテルへ向かう最中にリリスが問いかけた。   その声に、“超強化リストバンド”なるものを見ていたラスターが小首を傾げた。 「どうした? リリス」 「えっと、旅行券に書かれてるホテルの予約日って今日なんですか?」 その瞬間、歩いていた五人が固まった。 確かに、夏期休暇に入った後すぐにアミティエの魔法で来たんだ。 普通ならば移動期間も入れて、ホテルの予約を決めるはずだ。 カインはポケットから券を取り出して見ると、目を見開いた。 「……予定宿泊日、一週間後だね……」 カインの言葉に、一同は開いた口が塞がらない様子だ。 唯一、アミティエは「野宿も楽しそうだねー」なんて呟いている。 「はう!? どうするのさ! 一週間も野宿するつもり? ここら辺の宿屋は高いし!」 「野宿って言っても、王都を出たら魔物がうじゃうじゃいるんだよな?」 ラスターとリディアは切羽詰った表情で問い詰めた。 まるで子供が、父に不満を漏らすようだ。 乾いた笑みを漏らしながら、カインは考え込んでいる。 「またバロルに戻るか?」 「いえ、それなら私の屋敷にいきましょう。私が言えば、お父様も許可してくれると思うわ」 ニッコリと救いの女神ことレイナが微笑んだ。 貴族の家というのに興味がある二人にとって嬉しい提案だ。 けれど、引け目はある。 「でも迷惑になりませんか? 私……その、マナーとかはあまりわからないので」 「大丈夫よ。部屋は余っているわ。それに礼儀だって、あまり気にしなくていいわ」 それでも、リリスは申し訳なさそうにしている。
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