■戦いの幕開けと暗幕

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  屋敷に入ると、ラスターは開いた口が塞がらなかった。 入るなり、吹き抜けのエントランスが印象的で、開放感に溢れている。 大理石の床に敷かれた高級そうな絨毯に、一般人にはその価値すらわからないのだろう調度品が並んでいる。 「あわわわわ」 リリスは明らかに動揺していて、落ち着かない様子で辺りを見回していた。 そこに一人の従者が現れた。 「お帰りなさいませ、お嬢様」 「ただいま。トクナガ」 トクナガと呼ばれた初老の男は、恭しい一礼を施した。 顎に白い髭を蓄え、優しそうな男性だ。 燕尾服をビシッと着こなし、邪魔な白髪はオールバックにしている。 「そちらの方々は?」 「私の友人です。実は事情があって……」 小首を傾げたトクナガに、これまでの事情を話すことにした。 レイナがそれを説明し終えると。 「なるほど。でしたら、空き部屋をご自由にお使いください。それと申し訳御座いませんが、旦那様方は出掛けておりますので、ご挨拶は後程に」 トクナガは畏まって、五人に恭しく一礼をした。 釣られる様に、慌ててラスターとリリスとリディアが頭を上げる。 その様子にトクナガは小さく微笑むと、「着いてきてください」と告げて歩き出したので、六人もそれを追うように着いて行った。 部屋に向かう最中。 「不在……とうとう貴族の方にも戦争についての召集が……」 レイナの消え入るような呟きに、トクナガは何も言わずに表情だけを曇らせていた。
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