42229人が本棚に入れています
本棚に追加
――意識が流転する。
色素が鮮明に映し出されているのに、ラスターは自分の体で見ているような心地がしなかった。
辺りは一面が銀世界で、空には雪雲が広がっている。
そこは街のようで、人々の歩く姿も見えた。
そんな人々の中に、整った顔立ちの半分を隠す、金色の髪。
濃紺のマントを羽織る男だけにスポットが当てられている。
手には、炎のような刀身の剣――間違いなく《フランヴェルジェ》が握られていた。
(どうしてフランウェルジェを?)
もちろん、自分ではない。
ただただスポットが当てられる男を、ラスターは訝しげに見ていた。
そして男の唇が動くと――
「フランヴェルジェ……フェルアレスを紡ぐためにも、もう少し頼むぞ。お前が……俺を嫌っていても」
鼓膜ではなく、脳に直接届くように聞こえた。
――フェルアレスってなんだ?
聞き慣れない単語に問いかけようとしたが、声は出なかった。
「信念は願いを成就させる力……。さぁ、早く成就させよう」
男が微笑んで、空を見上げる。
――『信念は願いを成就させる力』
それはカインからラスターにも伝えられた言葉だ。
ということは、この男はカインの友人なのだろうか?
その時、全ての光景が水面のように揺れると、再び意識が流転した。
最初のコメントを投稿しよう!