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「目が覚めましたか?」
その落ち着いた声に、ラスターは目を開いた。
先ほどまでの光景が嘘だったかのように、元の部屋が映し出されている。
――夢、だったのか?
それにしては色素も鮮明で、それを脳も完全に記憶している。
どこか不可解な気分を味わいながら、ラスターは自分を呼ぶ者に焦点を合わせた。
「あ……」
そこには軍服をしっかりと着こなして、優しそうな笑顔を浮かべる青年――アルスが立っていた。
「おはようございます」
そう言って、アルスはニッコリと微笑んだ。
しかし、久々の再開に喜び合うことよりも、なぜアルスがここにいるのかが疑問だった。
「アルス先輩……どうして?」
「いえ、レイナさんに呼ばれましてね。そのついでに皆さんに会おうと思って来たのですが、ラスターが寝てまして」
それで話し合いも近かったので起こしたんです、と、アルスは弁明するように言った。
一方、ラスターはさっきの事が気になるらしく、苦虫を噛み潰したような表情を見せている。
「どうしました?」
その言葉にラスターは間を置いた。
しかし、結局は答えを濁した。
「……いや、何でもないです」
――夢以外になにがあるのか。
すっきりはしないが、そう結論を出して、ラスターが笑みを溢す。
「では、皆さんの元へ向かいましょうか」
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