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「あそこならお互いに被害は少ないもんね」
「でも……近くの村の人達は……」
アミティエも普段のような明るい声ではなく、冷静な声で淡々と言った。
それに対し、リディアの声にははっきりと悲しみの色が浮かんでいる。
彼女は医療学科であり、医者を目指す身。
現実はわかっていようと、辛いのだろう。
「戦争のためならやむを得ない。……それが王都が悩んだ末に出した答えだろうね」
カインの躊躇いがちな言葉が、全員に重くのしかかる。
誰だって納得はできないが、それが真実であり、否定できない答えだった。
時間が止まったように、一同を包む空間が凍りついた。
そして全員が沈黙する中――
「さっすがー! ああ! やっぱりカインは優しいなぁ! ――普通は、それくらいの被害で済むなら上等って話だよね」
どこからか、陶酔するような声が応接室に響いた。
その場にいる八人の声ではない。
カインを除いた七人は、弾かれたように周囲に目を向ける。
しかし、声の主は見つからなかった。
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