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「あそこです!」
リリスは張り上げた声に、一同が振り向いた。
リリスが指を差したのは、柱の影だったが――そこからぬるりと影が浮上した。
その影は、燃えるような赤い髪が形成されていく。
背中へ流れる濃紺のマントを翻して、男はにやりと笑った。
――あれ、あの男……。
「誰だっ!」
構えたシオンに、男は両手を上げて“戦う意思はない”と笑った。
――そうだ! あの男、金髪じゃないけど夢の中でみた人に似ているんだ……。
ハッとするラスターを尻目に、カインが男に近づいた。
「……何の用かな? デストロイ帝国の四聖ことルイ」
カインの低い声が聞こえると、一同は驚きに目を見開いた。
今、目の前の人物こそが、敵国の幹部――。
「相変わらず嫌われているなぁ……。戦うつもりはないんだよ? 今日はね、親友のために情報を持ってきたんだよ」
裏表の見えない笑顔を向けると、男は両手を拡げた。
その動作を行っただけで、空気がピリピリと刺さるようだ。
それは憎悪。溢れんばかりに吹きだす憎悪だった。
鷹の目を彷彿とさせる鋭い眼光が、カインをすり抜けて、七人を射抜くように向けられている。
――この目は……リリスの時みたいな……。
けれど、その時とは絶対的に違うのは――理性が千切れそうになるくらいの恐怖。
それを受けて、ラスターは恐怖していたのだが。
「……まぁいいや。さっさと教えてあげようかな」
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