■戦いの幕開けと暗幕

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  「あそこです!」 リリスは張り上げた声に、一同が振り向いた。 リリスが指を差したのは、柱の影だったが――そこからぬるりと影が浮上した。 その影は、燃えるような赤い髪が形成されていく。 背中へ流れる濃紺のマントを翻して、男はにやりと笑った。 ――あれ、あの男……。 「誰だっ!」 構えたシオンに、男は両手を上げて“戦う意思はない”と笑った。 ――そうだ! あの男、金髪じゃないけど夢の中でみた人に似ているんだ……。 ハッとするラスターを尻目に、カインが男に近づいた。 「……何の用かな? デストロイ帝国の四聖ことルイ」 カインの低い声が聞こえると、一同は驚きに目を見開いた。 今、目の前の人物こそが、敵国の幹部――。 「相変わらず嫌われているなぁ……。戦うつもりはないんだよ? 今日はね、親友のために情報を持ってきたんだよ」 裏表の見えない笑顔を向けると、男は両手を拡げた。 その動作を行っただけで、空気がピリピリと刺さるようだ。 それは憎悪。溢れんばかりに吹きだす憎悪だった。 鷹の目を彷彿とさせる鋭い眼光が、カインをすり抜けて、七人を射抜くように向けられている。 ――この目は……リリスの時みたいな……。 けれど、その時とは絶対的に違うのは――理性が千切れそうになるくらいの恐怖。 それを受けて、ラスターは恐怖していたのだが。 「……まぁいいや。さっさと教えてあげようかな」
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