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「四聖の中で僕を含めた三人はマナの塔へ行き、もう一人は戦場にて指揮官を務める。なんか兵器を完成させたみたい」
あっけらかんと話すルイに、一同は警戒していた。
その真偽は、もちろん定かではない。
反論するようにアミティエが叫んだ。
「それよりも、敵国の幹部の言葉なんて信じられないよ! もしかしたら嘘を……」
「うるさい。カイン以外は口を開くな」
恐怖に、アミティエの声がぴしゃりと止まる。
その命令が絶対遵守であるかのように、一同は固唾を呑むことすら叶わなかった。
「ふふっ……僕はね……帝国なんかどうでもいいんだよ。カイン、君さえあの頃に戻ってくれれば……」
うっとりとした笑みを浮かべて、唇を歪めた。
昔を懐かしむように、視線は虚空に向けられている。
しかし、その笑顔を向けられたカインは一蹴した。
「なるほど。じゃあ、もう帰っていいよ」
先程までの真剣な表情を崩して、カインは皮肉を込めてニッコリと微笑んだ。
――そ、そこで挑発するのかよっ!?
さすがにラスターは心の中で焦っていたが、それは杞憂で終わった。
なぜなら、ルイは喜んでいる。
「役に立って嬉しいよ! じゃあカイン、マナの塔で待っているからね?」
眩しいくらいの笑顔を、"男"が"男"に向ける。
カインは相変わらず笑みを崩してはいないが、眉がヒクヒク痙攣している。
「ばいばい、カイン」
その瞬間、ルイは影に溶けていった。
アイスのように原形を失っていくなり、真下の影に解けてしまったのだ。
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