■戦いの幕開けと暗幕

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  張り詰めた空気が崩れると、リリスは息を大きく吐いた。 「なんだったんでしょうか……」 「気にしなくていいよ。只の変態だ」 めずらしくもカインの笑顔が歪んでいる。 ほっと安堵して、シオンはめんどくさそうに言った。 「よーするに、カインの男色仲間だろ」 ぶっ。 食べ物を詰まらせてむせたように、ラスターは噴出した。 その言葉に、リディアは驚き、レイナは「まぁ、そうでしたの」と呟いていた。 そのとんでもない疑惑を、カインは全力で否定した。 「ち、違う! あんな奴と関係になるくらいなら、まだシオン達の方がマシ……あ」 言ってから後悔した。遅い。 仲間たちの冷えた目がカインに向けられ、シオンは肩をすくめている。 まぁ人の恋に口は出さないけれど―― シオンは、そういった感じの呆れた様子を見せている。 「おいおいカイン……。俺は誰が何と言おうと、どんな壁が立ち塞がろうと、レイナちゃんしか愛せない。レイナちゃんラブ! 俺はレイナちゃんが……おぶぁ!?」 瞬時にレイナの回し蹴りが顔面に織り込まれ、シオンは壁に突き飛ばされた。 ――懐かしいなぁ。 それは学園で見た何時もの光景で、ラスターにとっても、リリスにとっても、誰にとっても、懐かいものだった。 ――俺達は一人でも欠けたら、駄目だ。 戦争が終われば、そんな日々が戻ってくる。 心の中で、ラスターはそう信じていた。 待ち受ける運命も知らずに―― 一方で。 「男色ってなんでしょう?」 「んーなんだろうね? 男爵芋の仲間かもしれないよ!」 「お二人とも若いですねぇ」 聞きなれない単語に妄想を膨らませるリリスに、アミティエは嘘を吹き込み、アルスは笑っていた。
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