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張り詰めた空気が崩れると、リリスは息を大きく吐いた。
「なんだったんでしょうか……」
「気にしなくていいよ。只の変態だ」
めずらしくもカインの笑顔が歪んでいる。
ほっと安堵して、シオンはめんどくさそうに言った。
「よーするに、カインの男色仲間だろ」
ぶっ。
食べ物を詰まらせてむせたように、ラスターは噴出した。
その言葉に、リディアは驚き、レイナは「まぁ、そうでしたの」と呟いていた。
そのとんでもない疑惑を、カインは全力で否定した。
「ち、違う! あんな奴と関係になるくらいなら、まだシオン達の方がマシ……あ」
言ってから後悔した。遅い。
仲間たちの冷えた目がカインに向けられ、シオンは肩をすくめている。
まぁ人の恋に口は出さないけれど――
シオンは、そういった感じの呆れた様子を見せている。
「おいおいカイン……。俺は誰が何と言おうと、どんな壁が立ち塞がろうと、レイナちゃんしか愛せない。レイナちゃんラブ! 俺はレイナちゃんが……おぶぁ!?」
瞬時にレイナの回し蹴りが顔面に織り込まれ、シオンは壁に突き飛ばされた。
――懐かしいなぁ。
それは学園で見た何時もの光景で、ラスターにとっても、リリスにとっても、誰にとっても、懐かいものだった。
――俺達は一人でも欠けたら、駄目だ。
戦争が終われば、そんな日々が戻ってくる。
心の中で、ラスターはそう信じていた。
待ち受ける運命も知らずに――
一方で。
「男色ってなんでしょう?」
「んーなんだろうね? 男爵芋の仲間かもしれないよ!」
「お二人とも若いですねぇ」
聞きなれない単語に妄想を膨らませるリリスに、アミティエは嘘を吹き込み、アルスは笑っていた。
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