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「では、前に決めたように残留部隊は私、アミティエさん、リディア、リリスさんです。残留部隊の詳しい内容を話しますね」
アルスは左手にペンを持ち、白紙の紙に描いていく。
仲間はそれを覗き込んだ。
「ルグレ平原で戦いを繰り広げる。しかし、私達はは王都の防衛です。ですから、残留組は何もせずに終わる可能性もあります」
確かにデストロイ帝国の戦争が陽動なら、王都まで及ぶことはないかもしれない。
その時、アルスは「しかし……」と続けた。
「スパイや、単独で潜入してくる者もいるので気は抜けません」
「でも、それならマナの塔へ行く人を増やしたらどうかな?」
リディアは人差し指を顎に当てて、小首を傾げた。
「確かにそれが普通です。しかし、私達のような魔法を使う者は、激しい戦いにおいて自衛手段を持たず、邪魔になりかねますから」
アルスは躊躇いもなく告げる。
その言葉に、ラスターは眉をひそめた。
「邪魔って、ちょっと酷くないか?」
「事実だから良いよ。現に、私は剣とか苦手だからね」
そう言ってアミティエは笑ったが、どうもラスターは納得がいかないらしい。
しかし、シオンが論すように告げた。
「相手の四聖は、接近戦と遠距離戦のどちらにも対応している。ラスター、忘れるな。相手は学生じゃない、“軍人”だ」
その言葉が、ラスターを揺らした。
“学生”ではなく“軍人”。
騎士を目指す身として、経験になるかもしれない――馬鹿みたいに甘い考えだが、その考えがほんの少しだけラスターにはあった。
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