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王都の下層区の更に下に存在する《最下層区・下町》
そこは一般人も居れば、どこからか来た異国の人や、職を負われるものと――ゲリラ的に集っている。
上層区の様に上等な建物や装飾品などは全く無いが、人々の表情は明るい。
華とは無縁だが、人々には心があった。
しかし、やはり犯罪者は絶えない。
建物の影を縫うように移動して行くと、多くの人々が集まっていた。
そこは日の光が当たることのない場所で、永遠に闇が消えることはない場所だ。
そしてその場所には、所謂「悪人」や「犯罪者」と呼ばれる者達が集っていた。
そこに濃紺のマントを羽織る青年が、多くの悪人に囲まれて立っていた。
「おいガキ、その腰に下げる袋はなんだ」
「金貨。20枚くらいだけどね」
青年の言葉に、周囲から囁きあう声が幾重にも聞こえてくる。
金貨が20枚もあれば、5人くらいなら最下層区から旅立つことができる。
問いかけた男は、ニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべると、腰にある剣に手をかけた。
「命は助けてやる。ただしその金貨を置いていけばな」
「えー? 上げるわけないじゃん」
余裕を見せる青年はニコッと笑い、目に掛かる髪を手で押さえた。
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