■戦いの幕開けと暗幕

19/20
前へ
/709ページ
次へ
  「そうか、なら……」 周囲から、金属音が重なった。 獲物を狙うような野獣の目が、闇の中で怪しく光る。 「奪い取るまでだっ!!」 男の声を合図にして、周囲の影が一斉に青年へと飛びかかった。 本当に統率のとれた獣の集団のようだ。 青年――ルイは薄い笑みを浮かべると、目線の高さまで手を上げて、何かを呟いた。 「エンシェントウエポン  daeg――【終わりと始まり】」 ルイの手に周囲の闇が吸い込まれていく。 獣達も、ハッと止まった。 世界が――白く塗りつぶされていく。 ルイの手には墨汁を塗り固めたような剣が出来ているのだが、かわりに周りの風景から色が消え失せていた。 異常な光景に、獣達が吠える。 再び、凝縮された闇が何かの形を象っていく。 青年がそれを両手で握りしめると、漆黒の刀身を露にする大剣が形成された。 禍々しいオーラを放つ大剣は、シオンの創るものとは異色だ。 「死の予兆、ティルフィング……」 大剣の名を、懐かしそうに呟く。 ルイが握り締めた大剣を構えると、周囲の獣達が爆発したように襲いかかってきた。 「何だかしらねえ魔法を使ってやがるが、この人数と距離なら圧殺できんだよ!」 斧を振り上げている男が言った通り、見回せば軽く30人はいる。 しかし、そんな状況でもルイはニヤリと笑みを浮かべた。
/709ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42229人が本棚に入れています
本棚に追加