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「そうか、なら……」
周囲から、金属音が重なった。
獲物を狙うような野獣の目が、闇の中で怪しく光る。
「奪い取るまでだっ!!」
男の声を合図にして、周囲の影が一斉に青年へと飛びかかった。
本当に統率のとれた獣の集団のようだ。
青年――ルイは薄い笑みを浮かべると、目線の高さまで手を上げて、何かを呟いた。
「エンシェントウエポン
daeg――【終わりと始まり】」
ルイの手に周囲の闇が吸い込まれていく。
獣達も、ハッと止まった。
世界が――白く塗りつぶされていく。
ルイの手には墨汁を塗り固めたような剣が出来ているのだが、かわりに周りの風景から色が消え失せていた。
異常な光景に、獣達が吠える。
再び、凝縮された闇が何かの形を象っていく。
青年がそれを両手で握りしめると、漆黒の刀身を露にする大剣が形成された。
禍々しいオーラを放つ大剣は、シオンの創るものとは異色だ。
「死の予兆、ティルフィング……」
大剣の名を、懐かしそうに呟く。
ルイが握り締めた大剣を構えると、周囲の獣達が爆発したように襲いかかってきた。
「何だかしらねえ魔法を使ってやがるが、この人数と距離なら圧殺できんだよ!」
斧を振り上げている男が言った通り、見回せば軽く30人はいる。
しかし、そんな状況でもルイはニヤリと笑みを浮かべた。
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