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闇を失った世界は、先ほどまでは真っ白だったものの、今は朱に染まっていた。
「君で最後だね」
累々と横たわる死屍の側で、ルイは嘲笑を浮かべていた。
最後と呼ばれた男は、得物を捨てて、尻餅を付きながら逃げようとしている。
その様子が、深い嘲笑を誘う。
「わわわ、悪かったっ! だから……」
「もがけ、苦しめ、叫べ、……狂え」
男の哀願も虚しく、ルイは突き放すように笑った。
剣から漆黒の触手が伸びていき、職種が、男の耳、目、口から体内へと侵入していった。
「あ……ごがぅぐごがががががごぶぉあぁぁッ!」
聞いたことのない本物の絶叫。
男の瞳孔が開ききって、血管や脈が隆起している。
頭を抱えて苦しむ男は、狂ったように叫び散らしながら、蠢く触手に体を崩壊させていった。
「案外、持たないもんだね」
周囲は鮮血に染まっているが、青年には一滴も触れてはいなかった。
ルイは悲しそうに、屍山血河を見つめる。
「カイン……やっぱり君に会いたいなぁ」
ルイはそう呟くと、漆黒の剣を虚空へと消した。
途端、闇が周囲に戻っていく。
そして男達の割れた頭や取れた腕も、元通りになっていた。
それから数日後――30人を越える男達が、路地裏で仲良く眠っていたとの噂が広まった。
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