■決戦‐残留組‐

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  一方、王都の外壁の向こうでも事件は起こっていた。 王都の外壁の向こうは、人工的に作られた川に囲まれていて、東西南北に橋が架けられている。 中でも、物資の流通に使われるために南橋は横幅が広くて頑丈だ。 そして南門の上に、巨大な大砲のような機械と、漆黒の鎧に身を守る兵士がいた。 「隊長、充電が完了しました」 兵の言葉に、一際目立つ白色のマントを羽織った男が腕を組んで頷いた。 隊長と呼ばれた男は二メートルは越えるであろう体格だが、大砲はそれ以上に大きい。 そして隊長は睨むように王都を見上げた後、声高らかに宣言した。 「よし、目標は王城の中枢。魔導大砲、撃――」 「たれては困ります」 男の声に、上乗せされて低い声が響いた。 兵たちが得物を構え、一斉に正面の男を睨んだ。 男――アルスは黒く染まる瞳で、真っ直ぐに兵士達を見つめている。 これだけの人数を前にしながら、恐怖を覚えず、得物すら構えていない。――無謀にもほどがあった。 「なんだ? 貴様は」 「いえ、あなた方を止めに来ただけです。デストロイ帝国の兵士と、四聖のガロンさん」 ガロンと呼ばれた人物は目を細めた。 その理由が自分の名前を呼ばれたからではなく、この男から何か威圧的なものを感じたのだ。 そんなガロンに、アルスは微笑を向けている。 「こちらの作戦を知り、妨害に来たことは褒めよう。しかし、もう充電は完了した。――さぁ、お前はどうする?」 ニヤリと笑い、ガロンが右手を上げると、兵士達が大砲のような機械に手をかけた。 しかし、アルスは微笑を絶やさずに、あっけらかんと言った。 「どうぞどうぞ。撃ちたければ」
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