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「……脅しだとでも思っているのか? この魔導大砲は、爆発しなくてな。凝縮されたマナの塊が、ブラックホールのように周りのマナを吸い込んでいくんだ」
つまりマナで構成される万物の天敵だ。
そう付け加えると、ガロンは手を振り下ろした。
確かにマナの凝縮された塊が、魔導大砲の中で暴れまわっている。
これだけのマナが放たれれば、王都の四分の一が抉れてしまうかもしれない。
しかし、アルスは何もせずに見ている。
その様子にガロンは軽く舌打ちをすると、呆れて男から視線を反らした。
「気にするな。魔導大砲――撃て!」
その宣言と共に、爆発音が轟(とどろ)いた。
凄まじい轟音に重なって、黒い球体が勢いよく放出された。
それこそが凝縮されたマナの塊。
放たれてしまえば、もはや誰にも止められないだろう。
ガロンは皮肉を込めて、目の前のアルスに嘲笑を向けていた。
――しかし、その球体が空中で静止する。
「なっ、なんだこれはぁ!?」
黒い球体は空中に静止し、何かの見えない光と衝突していた。
このままでは球体が、その場で爆発してしまう。
ガロンは白色のマントを翻し、兵士など気にも止めずにその場を去ろうと走った。
「マナの凝縮の欠点は、相反する属性をぶつければ、その場で容易に拡散することですね」
男は薄く微笑み、黒い球体を見つめた。
「この場合は四元素を含んだうえで、光を主体としたものを当てればいい」
その瞬間、黒い奔流と光の奔流がせめぎあい、球体はどんどんと膨れ上がった。
そして拡散――。
黒い球体から放たれる光が、逃げ遅れた兵士を呑み込み、大地をも呑み込んでいく。
しかし、アルスの周りには再び光がせめぎあい、黒い球体から身を守っていた。
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