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光に包まれた後、空気が揺らぎ、歪んだ。
ラスターは眉根を寄せた。
(うぇ……なんか気分悪くなる……)
それから光が消えて、平衡感覚が戻ると、目の前に映る光景ををまじまじと見渡した。
どこまでも続いてるかのような広い草原で、あざやかな緑に目が痛いほどだ。
「すごい……!」
リリスとラスターの第一声だった。
これは目の前の光景だけではなく、アミティエについてでもある。
先程使った移動魔法は、上級魔法に部類するものだからだ。
つまり彼女こそが――この学園でも有数の実力者。
「さーて、ここなら暴れられるよ」
カインはそう言うと背中の大剣を抜いて構えた。
刀身には、入学式に支給された無色のゴムが付けられている。
入学時に支給されるもので、怪我を防止するためのものだ。
「さあ、ラスター。まずは君の実力を見てあげるよ」
「……ほ、本気で良いんですか?」
その言葉にカインは目を丸くしたが、すぐに薄い笑みを向けた。
「あはははは! 良いよ良いよ」
ラスターは笑われたことに多少の不快感を感じ、後ろに下がると双剣を引き抜いた。
無銘の剣だが、親から譲り受けた愛剣だ。
「リリス。ラスター君って実力的にどうなの?」
カインとラスターから距離を置いていたアミティエが、花を集めているリリスに問いかけた。
「筆記はダメダメですけど……、実技は一年生でも上位だったと思います。剣はすごいんです」
「へぇー、そうなんだ。意外……」
「カイン先輩はどうなんですか?」
「んー……、それは秘密!」
アミティエは陽気な語調で告げると、剣構える両者を見つめた。
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