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「……ほんとにいいんですね」
「どうぞどうぞ」
あくびをしながら笑うカインに、ラスターの闘争心が燻(くすぶ)られた。
心の中の火種が、ぼぅっと燃え上がる。
「後輩に負けても……泣かないでくださいねッ!!」
ラスターは多少の皮肉を込めた発言をした後、間合いを詰めるべく走った。
その速さは、アミティエが驚くほどに早かった。
瞬時に懐に入ったラスターは、双剣を後ろに引いた。
そして溜めの状態から、連続した突きを繰り出す。
双剣を最大限に使用した剣戟は、まさに数打てば当たる。
しかし、カインの大剣に全て防がれていた。
「右はいいけど、左の剣の扱いが不十分かな」
その瞬間、ラスターの腹に鈍痛が走った。
――え?
何かに突き飛ばされたように、地面を転がる。
見れば、カインはラスターの腹部に蹴りを放っていた。
ラスターは悔しそうに奥歯を噛み締めると、すぐに立ち上がった。
バックステップを踏んで、間合いを開ける。
だが、カインはそれを追わない。
「……ッ!」
「終わり?」
カインは微笑を崩していなかった。
それどころか汗一つかいていない。
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